金曜日の段階で投稿する予定だった非常にエキサイティングな記事を本日はお届けしたいと思います。
記事名は:TED: Future of Mobile With Henry Tirri, Head of Nokia Research [INTERVIEW]
投稿主は:@MashableのBarb Dybwad氏です。
Henry Terri氏はノキア社副社長兼、そのグローバル長期戦略を立案する主任リサーチャーを務め、モバイル事業に関する世界の最先端を感じ取っている人物です。今回MashableがTerri氏に行ったインタビュー(ノキア社はMashable TED チャンネルのスポンサー)では、今後5~10年のスパンで、モバイル技術がどういった発展を見せ、世界を如何に変革していくかについてフォーカスされています。
長文でしたので、Terri氏が述べた示唆に富む要点をまとめて、お送りしたいと思います。
どうぞお楽しみ下さい。
**和訳 開始**
『誰』の価値かで主役は変わる
Q: 今後5~10年のスパンで考えた時に、現在台頭しているテクノロジー(拡張現実、音声認識等)のうち、どれが最も大きな変化を世界に生むとお考えでしょうか?
A: その二つはユーザー体験型のテクノロジーですが、存在感は確かに大きいと思います。またその一方で、“mixed reality(混合現実) ”に関しての定義は未だ曖昧なままです。現時点ではっきりと分かっているのは、拡張現実が『現実を見ながら、デジタル世界から情報を付加していく』ことに対して、混合現実では『その逆を行い、現実世界からバーチャル世界に情報を付加する』ことが可能な点だ。私の視点から言えば、この二つの流れは世界を認識し、それと繋がっていく上で非常に『自然』な変化だと思います。
しかしここで鍵となる問いは、それらがどれだけシンプルでユーザーが飲み込まれるようなものになるか?です。私の予言としては、最初は検索とナビゲーションという一見繋がりのない価値から始まり、最終的には人と人の出会いで欠かせない価値を提供出来ると考えています。これからはリアルな写真を眺めながら、デジタルな情報がそこに付加されていること(その反対も然り)を見ても違和感を覚えなくなるでしょう。そしてその形は、視覚的なデジタル情報かもしれませんし、又は音声や感覚的な情報かもしれません。もし5~10年のスペックで語るのであれば、現実・バーチャル相互においてフィードックを貰える、『触覚』を重要視した価値が存在感を高めてくる、と私は思います。
上記の内容は非常に欧米的な見方です。高所得で『ギークな世界』で望まれる変化。しかし、もし質問が現在成長中の市場であるアフリカ、インド、中国、ラテンアメリカ、そしてロシアの限定的な部分等を対象にしているのであれば、その国々がもつ制約条件によって、ユーザー経験や台頭するテクノロジーの質も自然と異なる形態になるといえます。例としては、データ処理をサポートするインフラ設備が充実化することが言えるかもしれません。
故に、インターフェースの視点から言えば、音声と触覚に関わる技術は確かに重要になる。しかしその反面、こういった新興技術は必ずしもユーザーエキスペリエンスと密接に繋がっておらず、新興市場の人々にとってはエネルギー効率がより高いネットワーキングを可能にする技術等が必要になってくると思います。世界には『何百万人』の人々が先進的で洗練された試みをしていますが、それと同時に世界には『何億人』という人々が存在する市場があり、異なるアプローチを要する新興テクノロジーが必要とされているのです。
中長期的にタブレットは市場ルールを破壊しない
Q: あなたはタブレット等の『テクノロジールネッサンス』現象についてはどうお考えですか?またタブレット以外でスマートフォンとラップトップを生める中間的な存在は誕生すると思いますか?
A: 私はコンピューター科学者としてコンピューターとは40年程付き合ってきました。故に、メインフレームからミニコンピューター、PCからラップトップ・PDSまで様々なデバイスの開発を見てきました。皮肉なコメントかもしれませんが、上記のデバイスはある程度『流行り』だけだったのでは?と私は考えています。しかし、それらの人気は10年、20年と継続しています。その中で唯一消滅したのがミニ・コンピューターだけであって、メインフレームは未だ存在しますし、PCもまだ生き残っています。
そういった意味合いで、私はタブレットが何かを『消し去る』存在、それくらい強力な力を発揮出来る存在になるとは考えていません。あり得る可能性としては、タブレットとネットブックの一体化です。個人的な見解としては、タブレットが市場での支配的なプレイヤーになり、ラップトップやネットブックを消滅する、『私達が唯一必要とするデバイス』に成長するとは考えられません。
リアルタイムメディアストリーミングは人間の本能とマッチする
Q: オンラインメディアストリーミングはコンテンツプロバイダー側にどういった影響を与えるとお考えでしょうか?ユーザーの『ライフスタイル』に関する問題にも直面しますし、モバイルテレビ等のサービスが実際に普及するために超えるべき障壁が非常に大きいと私は感じます。一体どれだけの人間が、車に乗るまでの余暇にテレビを見る必要性を感じているのでしょうか?
A: この問題は非常に文化・コンテクストに依存する。例えば韓国等は、モバイルテレビを何年も使用している。しかし私にとって、リアルタイムメディアストリーミングの成功要素は『個人的な経験を共有する』ことに対するユーザー間の好感度の問題だと思います。例としては、あなたが友人とバーに出かけている際に、子供がサッカーをしている瞬間をモバイルを使用して共有する等です。これは従来のコンテンツ生成とはアプローチが異なります。一つに、動画は断片的なのでコンテンツは自ずと短縮され、二つにサービスが主体的参加型なのでそれが人間が本来備えている『自己表現』への欲求に与える影響がある、という点においてです。換言するとリアルタイムメディアストリーミングは、自分を制約条件下で表現するプラットフォームとして機能するはずです。そしていつの時代でも、あなたのユニークな表現に興味を頂く人々が世界にはロングテールのように待っています。
またここで最も問題となるのは『スケール』です。故にTwitterのようなサービスにおいては、数人のフォロワーしかいないときは適度に楽しくて、二百万人のフォロワーがいる際は非常に面白くなります。しかしもしあなたのフォロワー数が一万人の場合、『これから次は何をすれば良いのか?』と立ち止ってしまう。その中にいる人間は私と近い仲間でもないし、一万人全員を把握していないし、一方で何百万人もフォロワーがいる人間程知名度もない。私は連合型ローカルコミュニティーという概念に意義を感じています。小さなオーディエンスがいることも大事ですし、共通のプラットフォームとグローバルに人・情報と繋がるという点では連合という概念も重要です。地理的な意味であなたをフォローする人が『スケール』することは困難かもしれませんが、あるコミュニティーにおいては、ローカルに根差しながらもインパクトのあるサポートをあなたに提供してくれることも十二分にあるはずです。
プラットフォームがある場所にフォロワーは現れる
Q: それは非常に筋が通っていると思います。特にウェブ上でのユーザー創造型コンテンツという環境においては、より多くの人々が自らのコンテンツを多くのユーザーと共有したいと考えていますよね。
A: そうですね。彼らはとにかく人々と情報・発見を共有をしたいという願望があって、もしそれを実現する容易で一般的なプラットフォームがあれば、それを活用します。何故なら、そのプラットフォームをフォローする人間が必ずいるからです。
今後は位置情報革命期
Q: ロケーションベースのサービスがどんどん人気を集めている中で、あなたが特に『キラーアップ』として認識しているものはありますか?
A: 私の頭に最初に浮かんでくるものは、あなたの位置情報によって非常に的確な検索結果を表示出来る『ローカルサーチ』です。またソーシャルサーチもあまり努力を使わずに活用出来るサービスで、物理的な近さを基に人々を検索できることで、わざわざ遠方に位置するバーに誰かと行く必要性が無くなるのです。こういった容易に結果(効用)を感じ取れるサービスが今後さらに大きくなっていくはずです。
ロケーションベースシステムについて触れる際に、多くの人々がまだ考えていないその活用方法は、交通情報や空気汚染情報等の環境データを集計することです。特に新興国では健康関連、また流行情報に関する集計が必要とされています。モバイルデバイスのグローバルな偏在性によって、それらの問題をモニターすることが重要になります。こういった位置情報サービスを活用することで、データを集め情報を透明化する、私が『集計デバイス』と呼ぶ機能が活躍してくるはずです。
空気汚染はその良い例かもしれません。例としてロスアンゼルスでどれだけの空気汚染とあなたが日々対峙しているか等、環境に関するリアルタイムな情報を入手出来るのです。私達は交通情報に関して既に同様なアプローチを実現していますが、それをより広い形(天気、汚染等々)で当てはめて考えてみることが面白いはずです。位置情報プラットフォームは、人々の現実世界での位置と『情報の計量化』を共鳴させます。それは新たな世界を創造することを意味するのです。
**和訳 終了**
記事全文をお伝え出来ませんでしたが、Terri氏の世界観は少なくとも伝わったかと思います。
スマートフォンを始め、モバイルデバイスと私達のライフスタイルは猛スピードで一体化してきています。
AR技術で日本を代表するセカイカメラを始め、ロケーションベースではFourSquare等が現実とデジタルを統合させる面白い試みを展開。
またコンテクスト(環境)次第でライフスタイルにおける『当たり前』が異なる故に、必要となってくるモバイル機能・アプリケーションも変わってくる。
結局『無条件』で重要視されるのは、『どこ』の『誰』にとっての価値なのか?ということ。
それが明確化していないと、サービスはデザイン・プロモーション時点で大きな確立で消滅する。
そういった点を踏まえて、現在自分は位置情報を取り入れた新たな仕組みを走りながら構想中です。
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だいすけです!いつも楽しく読ませて頂いています!
返信削除今回のエントリ非常にワクワクしました!
またぜひスカイプしましょう!!
@goyuです!とても勉強になります!ありがとうございます!
返信削除大助君、
返信削除ブログにてコメント有難うございます!
是非じっくり語り合えればと思います☆
GOYUさん、
参考にして頂き光栄です。
自分はこのインタビューを理解しながら、実際に自分がノキアが展開している好事例を『勉強しようともしていなかった』ことに気づきました。そこには目的を実現化するためのヒントが溢れていると感じます。
そういう意味で自分にとっても勉強が多い記事でした!
今後とも宜しくお願い致します☆